日本の終身雇用制度が崩壊して、働き方の多様化が進むことによって、自分で事業を始める人がどんどん増えています。しかしながら、個人事業主としてデビューして、すぐに生活に必要な金額を稼ぎ出せる人はごく一部でしょう。また、会社勤めのサラリーマンのように、毎月一定額の給料が支払われて安定した収入が得られるというものでもありません。

ある月はたくさん稼げて、別の月には考えていたほどの収益が上げられなかった、ということはよくある話です。それで、将来設計や家計の管理が複雑にあることもしばしばです。また、長期的な経済不況や自分の事業の分野が様々な要因で打撃を受けることもあります。

そういった中で、自分の事業だけでは生活を維持できない年に、個人事業主がアルバイトをして収入を調整することがあるでしょう。この場合、アルバイトで得られた収入も課税対象になるので、毎年の確定申告の際に含めなければいけません。バイト先との契約形態によって、税金の計算の仕方や申告書の準備の方法が変わってきますので、よく理解しておく必要があります。

個人事業主がアルバイトをした場合は所得の種類に注意しよう

自営業をしている人が自分の事業で得た収入とアルバイトで得た収入では所得の種類が異なり、税金の計算方法が違うことがあるという点を覚えておきましょう。アルバイト先と時給制などで雇用契約を結んでいるのであれば、そこから得られた収入は「給与所得」という分類になります。

一方、成果を上げた場合のみに報酬が発生するような、完全出来高制など業務を請け負う形で契約をしているのであれば、そこから得られる収入は「事業所得」という分類になります。個人事業主がアルバイトをした場合の税金や確定申告を考えるにあたって、契約形態をアルバイト先に確認することが必要です。

所得の分類を確認できたら、それぞれの所得計算方法を理解しておきましょう。事業収入の場合は、収入金額から必要経費を差し引いた額が「事業所得」となります。青色申告をしている場合は、「青色申告特別控除」も受けられます。アルバイト先から給与の形で報酬を受け取っているのであれば、給与収入から給与所得控除額を差し引いた額が「給与所得」となります。

給与所得の計算に含まれている「給与所得控除」は、いわゆる事業所得の計算に適用される「必要経費」に相当します。これは、年間の給与収入の額に応じて概算額で計算できるようになっています。

個人事業主がするアルバイトのほとんどは給与所得になるでしょう。なぜなら、アルバイトをする理由の多くが自分の事業の収入では生活を維持するのが難しく、さらなる収入が必要であることだからです。そのような事情がある中で、確実に収益を上げられるかどうか保証のない、完全出来高制のようなアルバイトを請負契約で選択することは考えにくいからです。

給与所得のアルバイトで必要経費に相当する所得控除額について

国税庁は、給与収入があった人が確定申告に必要な所得額を計算するために、「給与所得控除額」というものを公表しています。2020年分の確定申告分から給与所得控除額では、給与収入が1,800,000円以下の場合、収入金額の40%-10万円が控除額となります。

例えば、アルバイトで給与収入が1,700,000円あった場合の給与所得控除額は580,000円となり、所得額は1,120,000円となるわけです。また、給与収入が165万円以下であった場合は、計算式を当てはめると控除額は一律550,000円となります。

令和2年分から給与所得控除が改正されました。
  • 給与所得控除額の一律10万円引き下げ
  • 給与所得控除額の上限が220万円から195万円に引き下げ
  • 給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額が、1,000万円超から850万円超に引き下げ

※給与所得控除額が減ることになりますが、その分基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられるため、アルバイト収入でしたらほとんどの場合プラスマイナスゼロになります。

令和2年分(2020年分)以降の場合
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から 6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から 8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

この情報を基に、どれくらいアルバイトをして稼ぐと、確定申告の時の所得額がいくらで申請することにるのか、事前に予定を立てることができます。

アルバイトをした場合に確定申告で個人事業主が求められること

個人事業主がアルバイトをすることによって給与収入が発生すると、本業の事業収入とアルバイトの給与収入という2種類の別の分類の収入を合わせて計算して確定申告する必要があるので、アルバイトをしていなかった年よりも方法が複雑になります。その時になって慌てないためにも、今のうちに理解しておきましょう。

2019年4月1以降、確定申告に源泉徴収票の添付は必要なくなりました。それでも、確定申告書を準備する際に必要となる情報が源泉徴収票に記載されているので、アルバイト先から源泉徴収票をもらう必要があります。この源泉徴収票のデータは、住民税を計算するための資料としてアルバイト先が各市区町村に提出しています。

それで、税務署でも給与所得の申告が正確になされているかを判断する資料になるのです。確定申告の書類を準備する際に計算ミスを防ぐ意味合いも込めて、添付の必要が無くてもアルバイト先からもらっておきましょう。

アルバイトをした場合に個人事業主が確定申告の際に注意すること

個人事業主として何年も営業していた人であれば、確定申告書の準備や手続きについてはある程度慣れているでしょう。必要経費の計算や分類、記録など、個人事業主として仕事を始めた当初はいろいろ戸惑ったようなことも、毎年繰り返していくうちに作業時間も短縮できているでしょう。

最近ではクラウド会計アプリがあるので、帳簿管理や記録も、依然と比べると手間が掛からなくなりました。まだ使ったことがないのなら、ぜひ試してみることをお勧めします。日々の作業効率が大幅にアップするので、時間の節約や必要経費の圧縮にもつながるでしょう。

この確定申告において、事業収入とは別にアルバイトをして給与収入が発生した年は、通常とは違う方法で確定申告書を作成する必要があります。まず、もう見慣れているであろう申告書には、所得ごとの「収入金額等」と「所得金額」という欄があります。本業で得た事業収入は、収支内訳書や申告決算書を参照して、収入金額等と所得金額の事業(営業等?)という欄に記入します。ここまでは毎年の確定申告と同じです。

そして、アルバイト先からもらった給与収入については、源泉徴収票を見ながら収入金額等と所得金額の給与?という欄に記入しなければいけません。そして、忘れていけないのは源泉徴収額を記入することです。アルバイト先から受け取る給料は源泉徴収税額が引かれた額を受け取っていることがほとんどです。この源泉徴収税額というのは所得税を前払いしている額です。つまり、この額は納付税額から控除できる金額ということです。

個人事業主がアルバイトをした年の税金の計算は難しすぎるわけではない

個人事業主が安定した収入を得続けることは簡単ではないため、時にはアルバイト収入に頼らざるを得ないことも十分あるでしょう。そんな時に、税金にまつわる疑問がいろいろと頭をよぎるものです。それでも心配しすぎる必要はないでしょう。今はクラウド会計アプリという便利なツールも普及してきているので、うまく活用すれば必要経費の計算や帳簿管理もシンプルにできますし、確定申告もいくつかの点を覚えておけば、事業収入とアルバイトの給与収入の両方があっても難しすぎることはありません。

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