キャッシュレス決済やインターネットショッピングの普及とともに、商品を購入してポイントを受け取って、そのポイントを使って買い物をするというスタイルが当たり前の時代になりました。これは個人消費者の日用生活品だけでなく、個人事業主や法人などの事業を営んでいる人や組織が、その事業に関連する物品を購入する際にも当てはまります。
事業者が使うお金の流れは納める税金にも関係してくるので、細かく帳簿に記録する必要があります。そこで、個人事業主が買い物で受けてポイント還元やポイント利用は、経費の仕訳上はどういう扱いになるのか、という疑問が生じるのです。個人事業主が利用するポイント還元やポイント利用は税金に関係することがあるものの、ケースバイケースの部分もあります。自分の場合、どう関係するかをよく理解しておく必要があるでしょう。
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ポイント利用で買い物をすると仕訳が必要になる
個人事業主は、事業に関係する取引が発生すると、経理上の業務として帳簿付けをしなければいけないことになっています。業務上の物品の購入を通して、オンラインショップでポイントを受け取ったり使ったりするという、お金ではないものの一つの取引が発生します。この場合、個人事業主が仕訳をしないといけないのは、ポイントを受け取ったときです。買い物金額に応じてあらかじめ設定されているパーセンテージのポイントが付与されることがありますが、ポイントを受け取ることによって実質的に何らかの得をしているわけではありません。実際、一定期間ポイントを利用しないと失効してしまうというサービスもあり、そうなった場合、ポイントを受け取ったという事実は事業者にとって何の利益にもならないという結果になります。それらを踏まえて、買い物をすることによって受け取るポイントを仕訳する必要はないものの、そのポイントを使って何かを得た場合は、仕訳をする必要が生じます。
個人事業主の場合、使うポイントがもともとどこから得たポイントであるかによって、考え方が異なります。具体的にいうと、事業で発生した買い物によって受け取ったポイントを同じく事業目的の買い物で使用するというケースがあります。また、同じく事業で発生した買い物によって受け取ったポイントを個人的な私用の買い物で使うというパターンもあるでしょう。他には、ポイントの出どころが事業に関係のない私用の買い物で、そのポイントを事業の買い物に使うという場合も考えられます。さらには、個人的な買い物で得たポイントを個人的な買い物で使用するという事業に関係がないようなケースもあり得ます。それぞれの考え方の違いを理解して、経費の仕訳を正しく行うようにしましょう。
事業に必要な買い物で受け取ったポイントを事業目的の使う場合
個人事業主の方は、事業に関係する物品を購入するための経費用クレジットカードやショッピングアカウントを、私用のものと分けているという方がほとんどでしょう。そこで、事業の買い物で受け取ったポイントを事業用でポイント利用するというケースは多く発生します。
例えば、事務所で使用する書類用キャビネットを55,000円(税込)で購入したとします。その買い物に対して税抜商品価格の5%分である2,500円分のポイントがもらえました。別の機会に、書類棚が手狭になり、もう一つ同じ棚を購入することになったとします。このときに、前回もらった2,500円分のポイントを使用して、52,500円で購入することができました。
この場合、一つ目の書類棚を買ったときの仕訳は、55,000円の金額を記録しておけば問題ありません。受け取った2,500円分のポイントに関する仕訳は必要ありません。一方、2つ目の棚を買ったときの仕訳は、実際に支払うことになった金額である、52,500円を記録します。55,000円‐2,500円(ポイント分)で算出される実費です。これが、事業の買い物で受け取ったポイントを事業で使った場合の「仕訳」方法です。
仕訳と切り離して考えなければいけないのが「税金」との関係です。事業の買い物で受け取ったポイントを事業に使うと、一種の利益になると考えられます。そのため、この例のケースでは、2回目の棚の購入でポイント利用した2,500円は「事業所得」とします。つまり、この2,500円は税金がかかるということです。
事業用の買い物で受け取ったポイントを個人的な買い物で使った場合
個人事業主の方で仕事用の必要物品を購入して、いつの間にかたくさんたまっていったポイント利用をして、個人的な買い物に充てるということがあるでしょう。例えば、仕事用の書類棚を55,000円(税込)で買って、受け取った2,500円分のポイントを使ってジーンズを1着買ったとします。この場合、棚の購入時にはポイントに関する記録は必要ありません。しかしながら、ジーンズを購入したときのポイントの動きは記録する必要があります。仕訳方法としては、ポイント利用分の2,500円を貸方の雑収入として、借方を事業主貸とするのです。そして、税金の面では個人的な買い物に使用した場合であるものの、ポイントの出どころは事業用の買い物ですから、「事業所得」になります。つまり、「雑収入2,500円」として課税対象になるということです。
個人的な私用の買い物に受け取ったポイントを事業で使うとどうなる?
日用品や個人的な買い物で貯まったポイントを事業の買い物に充てるということも、個人事業主であればよくある話でしょう。例えば、11,000円(税込)のジーンズをネットショッピングで購入して、1,000円分のポイントをもらったとします。それを55,000円(税込)の事務所用書類棚を購入するために使いました。
もちろん、ジーンズの購入費用やもらえたポイントに関する記録は必要ありません。しかし、個人的な買い物で手に入れたポイントを事業用買い物に使った場合は、ポイント1,000円分を貸方の「事業主借」として記録できます。
そうすると、事業主借というのは収入の勘定科目でないので、税金対象にならないのかという疑問が生じます。これは、ポイントをどの所得分類に含めるのか、という点を考えなければいけません。
事業用の買い物で得られたポイントは「事業所得」になります。しかしながら、今回のケースのような個人的な買い物によって得たポイントは事業とは別の出どころなので、「一時所得」として考えます。この一時所得は最大で50万円の控除ができるようになっているので、ポイント利用によって得をした金額が年間50万円以下であれば、その部分に税金はかかりません。
個人事業主が私用の買い物でポイント還元を受けて私用でポイント利用した場合
一個人事業主が自分の事業とは関係のないところで、全くの私用の買い物をしてポイント還元を受けたり、そのポイントを使用して業務とは関係のない買い物をするといったことは誰にでもあるでしょう。この場合、もちろん事業とは何の関係もないところで発生している取引ですから、事業の帳簿には何の影響もないでしょう。しかしながら、ポイント還元がどの所得区分になるのかという点では、私用の買い物でポイント利用しようが事業用でポイント利用しようが、「一時所得」になると考えられるでしょう。
ポイント還元やポイント利用の経理処理を正しく理解しよう
キャッシュレス決済やインターネットショッピングの普及で、ポイント還元やポイント利用で買い物をする機会が大変多くなりました。ポイントの種類や利用条件などが各業者で異なり、複雑だと感じることもあるでしょう。とはいっても、ポイント利用やポイント還元の経理上の仕訳や経費の計算は、一度覚えてしまえばそれほど複雑なものではありません。これからの時代、避けては通れない仕訳の分野なので、個人事業主の方は早めに正しく理解して経理事務に取り入れましょう。最近では、クラウド会計アプリが普及しているので、難しく感じるのであればそういった助けを利用するもの一つ方法です。
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