コロナウイルスの蔓延による経済への影響は甚大で、事業規模に関わりなく多くの経営者が苦しい舵取りを強いられています。個人事業主の中には、コロナによって売り上げが大幅に落ち込んでしまい、税金・社会保険料・国保料などの支払いが困難になっているケースも珍しくありません。

また、負債を抱えてしまい事業そのものが継続できなくなったという事業者もいます。そのように、国庫や地方自治体へ納めるべき税金や保険料が払えない個人事業主向けの救済措置として、国が主体となり複数の減額・猶予・免除制度が用意されました。それぞれの大まかな枠組みを前もって覚えておくことは緊急事態への備えとして役に立つはずです。

所得税及び消費税は納付猶予制度あり

所得税は国へ納める税金の1つで、前年の所得に応じて金額が決まります。つまり、2020年に支払う所得税は2019年度の事業所得に基づいて計算されるわけです。所得税を分納している事業者の場合、コロナの影響で急激に売り上げが落ちたため、支払いができなくなることが起こり得ます。

その際には、納税猶予制度を活用しましょう。納税猶予制度を申請することで、原則1年間は所得税の支払いを猶予してもらうことが可能です。これまでは納税猶予制度を活用すると、その分延滞税が課される仕組みになっていました。ただ、コロナの影響で売り上げが落ち込んだ事業者に関しては、特例として延滞税も免除されることになっています。ですから、ぜひ国税局猶予相談センターに問い合わせてみましょう。

消費税は小売業を営んでいる事業者が国に対して支払う税金です。消費税に関しても、所得税と同じく、コロナによって支払いができなくなった事業者のための猶予制度が用意されています。基本的には、2020年2月以降に関し、前年度の同じ時期と比較して売り上げが2割以上減少しており、明らかに消費税の納付が難しいと判断される事業者に適用されます。

国税局猶予相談センターに問い合わせれば、猶予制度に関する最新の情報を手にすることができるはずです。ただし、収入によっては1年間の完全猶予ではなく、延滞税の適用を求めない分納となるケースもあることを覚えておきましょう。

所得税や消費税などの国税に関しては、国税庁の公式サイトで納税猶予申請用フォーマットが用意されています。各申請書に関する記入方法に関してもお手本があるので、それらをダウンロードして印刷し、記入できる箇所はすべて記入してから相談に行くと、手続きがスムーズに進むはずです。一方、都道府県税に関しては、地方自治体ごとに猶予制度や免除制度の詳細が異なります。ですから、市役所でどのような手続きが利用可能か相談してみましょう。

社会保険料が払えないときは猶予と免除制度が利用可能

個人事業主の場合、社会保険料として国民年金保険料と国民健康保険料の2つを支払う必要があります。国民年金に関しては毎月定額の支払いが求められます。一方、国民健康保険は前年度の所得に応じて変動するので、2019年に業績が好調だった事業者は2020年の保険料が高くなっているはずです。

これら社会保険料を毎月分割で納付している事業者で、コロナによって売り上げが減少したために支払いが難しくなったケースは少なくありません。国民健康保険の場合、管轄する市や区などの自治体へ申請することで、6か月から1年程度の猶予を受けることができます。また、65歳未満の個人事業主で、前年と比較して売り上げが7割以上落ち込んだ場合には、健康保険料を再計算して実質減額してもらえる措置もありますから、ぜひ自治体の社会保険課で相談してみましょう。

国民年金に関しては、猶予ではなく免除の手続きが用意されています。申し込みは半年単位で行うことが可能です。業績低下の割合に応じて免除額は変動するようになっており、「25%免除」「半額免除」「75%免除」「全額免除」の4種類が用意されています。免除手続きをきちんと行っておくと、納付免除になっている期間もすべて未納ではなく受給資格期間として登録されるため、その期間に関しては年金の半額を受け取る権利が発生するのです。

また、免除期間中に不慮の事故などに遭ってしまった場合には、障碍者年金を受け取ることが可能となります。加えて、未納扱いにはならないため、行政による財産の差し押さえなどを受けるリスクはなくなるというメリットもあるのです。

翌年度以降も事業者として業績が伸びず、ほとんど所得がない状態が継続する場合、国民年金の免除は基本的に継続されます。その場合、「免除期間が更新されました」という通知が届きます。一方、所得が回復した場合には、支払いを再開するよう年金事務所から通知が届くはずです。免除を受けてから10年以内であれば、国民年金保険料を追納することが可能ですから、再び業績が上向いて余裕ができたなら、ぜひ追納制度を活用しましょう。

公共料金も自治体によっては猶予してもらえる

水道や下水道料金などの公共料金は各自治体によって対応が大きく異なります。首都圏では申請があれば支払いの猶予を実施する自治体は少なくありません。ただし、猶予期間は平均1か月程度ということを覚えておきましょう。事業が破綻して収入がほとんどない、あるいは債務を抱えてひっ迫しているケースでは、そのほかの公共支援サービスを利用できる可能性がありますから、市役所や区役所の担当者へ相談してみることをおすすめします。

ガス・電気などのインフラに関しても相談してみよう

コロナの影響によって、公共料金のほかにガスや電気料金などのインフラに関しても支払いが難しくなっている事業者は少なくありません。これらの料金に関しても経済産業省による指導が行われました。その結果、全国の電力会社およびガス会社が政府の提案する特別措置に参加することになり、2020年3月分以降の請求に関し、申請が認められた人に対しては1か月の支払い猶予が与えられることになっています。

経済産業省では、すべての人を対象として電気・ガス料金に関する特別対策チームを設けていますから、どこに申請したら良いか分からないという個人事業主はぜひ問い合わせをしてみましょう。

不明な点があるときは監督する省庁に相談しよう

経営が悪化して税金や社会保険料などが払えないときには、それぞれのシステムを運営・監督している省庁へ相談してみましょう。所得税や消費税であれば、毎年確定申告を行っている税務署へ行き、税務相談を申し込むと良いでしょう。事業者として税理士事務所と顧問契約をしている場合には、担当の税理士へ相談するのも良い方法です。

国民年金や国民健康保険に関しては、年金事務所へ行くか、もしくは市役所や区役所の年金課で担当者に相談することをおすすめします。公共料金に関しても、請求書に記載されている番号へ電話するか、もしくは市役所や区役所で相談をして、猶予や免除の手続きがあるのか、もしあるならどのように申請すればよいのかを教えてもらうと良いでしょう。

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