テレワーク向きなIT導入補助金

2020年現在、コロナウイルスにより世の中は大きく変わりました。信頼の置けるワクチンなり、確かな効果がある特効薬なりが完成しない限りは外出しにくい状況が続くはずですが、コロナウイルスの影響により業務の形態も大きく変わっています。

テレワークという言葉が2020年の流行語大賞にノミネートされましたが、2020年は自宅での仕事が大きく取り上げられた年です。厳密には、在宅勤務とテレワークは全く同じ意味ではありませんが、インターネットや電話を使って自宅にいながら仕事をするテレワークは、働き方を大きく変える存在と言っても過言ではありません。

しかし、テレワークを前提としていない業務を手掛けていた場合、急に方針転換をするのは難しいのが実情です。コロナウイルスにより業績に悪影響が出ていればなおさら難しいですが、個人事業主や小規模事業者がテレワークの導入を検討しているのであれば助成金や補助金を活用したいところです。

現在のところ、テレワークのために使える様々な助成金や補助金がありますが、まず押さえておきたいのはIT導入補助金で、名前の通りITツールの導入を支援してくれます。経済産業省の管轄であり、審査を通過しないといけないためハードルはやや高めですが、テレワーク向きなのが魅力です。

今までだと、IT導入補助金にはA類型とB類型という分類があり、それぞれ補助金の申請額が異なりましたが、テレワークが求められる現状、IT導入補助金の特別枠ことC類型ができました。このC類型とはテレワークの導入費用、業務改善の費用を助けてくれるもので、コロナウイルス対策としての側面が強く出ています。

そのため、C類型はコロナウイルスの影響を受けている企業、個人事業主を対象としており、新規事業者向けではありません。2020年のコロナウイルス流行後に事業を始めた場合は、従来のA類型やB類型を利用するしかありませんが、以前から事業を始めており、コロナウイルスの影響でテレワークを検討しているのであればIT導入補助金のC類型の利用を検討してください。

IT導入補助金のC類型はA類型、B類型とあわせて利用することはできず、補助率は2/3、もしくは3/4です。A類型、B類型の場合は補助率は1/2のため、導入費用の半分までしか支援を受けられませんでしたが、C類型ではより多くの支援が期待できます。

具体的な補助額は30万円から450万円までで、45万円以上のITツールを導入する際に使えるのですが、IT導入補助金の事務局に登録されたジャンルからITツールを選ばないといけません。
顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収管理など6つのジャンルが事務局に登録されていますが、テレワーク目的であれば総務・人事・給与・労務・教育訓練・テレワーク基盤のジャンルに相当するので、ジャンル違いで利用できないということはありません。

これらの6つのジャンルの他に、セキュリティなど5つのオプション、ハードウェアレンタルなど4つの付帯サービスにもC類型は適用できますが、こちらは必ずしも利用しなくても大丈夫です。また、サプライチェーンの毀損への対応や非対面型ビジネスモデルへの転換、あるいはテレワーク環境の整備のいずれかに経費の1/6以上が該当していないといけませんが、テレワーク導入を考えているのであれば問題なくパスできるでしょう。

この3つの条件のうちサプライチェーンの毀損への対応を目的とする申請はC類型-1に、非対面型ビジネスモデルへの転換とテレワーク環境の整備のどちらかを含む申請はC類型-2に分類され、C類型-1の補助率は2/3、C類型-2の補助率は3/4、補助額は30万円から450万円でどちらも変わりません。

具体的なIT導入補助金の申請の流れですが、2020年より完全なオンライン申請がスタートしており、 gBizIDプライムアカウントがないと申請できなくなりました。行政サービスへのログインに使われているgBizIDは、様々な行政サービスに1つのID、パスワードでログインできるものです。

gBizIDプライムアカウントを用意したら、テレワークのためのITツールを選択し、そのツールを手掛けているIT導入支援事業者に連絡します。用意したgBizIDプライムアカウントで、IT導入支援事業者に申請マイページの招待を受け、申請マイページで各種情報を入力する形です。

書類も申請マイページ内で添付しますが、法人の場合は3ヶ月以内に発行された履歴事項全部証明書と直近の法人税の納税証明書が、個人事業主の場合は運転免許証か3ヶ月以内に発行された住民票、直近の納税証明書と確定申告書Bの控えが求められます。

IT導入支援事業者に入力した情報が正しいことを確認してもらい、申請マイページが完成したらオンラインから事務局へ申請すればOKで、あとは結果を待つだけです。

テレワークに使える他の補助金、助成金は

IT導入補助金はテレワークの環境作りに役立つ補助金ではあるものの、現時点でIT導入補助金のC類型は2020年度内の募集だけと明言されています。コロナウイルスの流行が落ち着かないようであれば一転して継続する可能性もあるものの、もしC類型の募集が終了しているようであれば他の補助金、助成金にも目を向けてください。

IT導入補助金以外の、テレワークの導入に使える他の補助金や助成金もコロナウイルスの状況次第で終了する恐れはありますが、自治体が手掛けているものなど色々な種類があります。2020年11月時点で募集が続いているものを紹介しますが、まずは東京都内に本社、もしくは事業所を構えている中小企業を対象とした「東京しごと財団 テレワーク定着促進助成金」です。

テレワークに必要な機器、ソフトウェアを対象としている助成金で、助成率は2/3、最大250万円の支援が受けられます。神奈川県愛甲郡愛川町の起業支援・店舗再活性化事業にはテレワーク起業補助があり、これから起業を考えている人向けです。

愛川町の空き店舗を拠点として使うという条件があるものの、起業の経費の1/5まで、最大15万円の補助が受けられます。自治体独自の制度でテレワークを促進させる動きは強まっているので、ぜひお住まいの自治体の補助金や助成金でテレワークに使えるものがないか調べてみてください。

テレワークを導入する場合、しっかりとした計画作りが必要で、以前に負けないくらいの成果を出すためにはビジョンを明確にしておかないといけません。特に、従業員に働いてもらう経営者の立場の場合、ビジョンがないとテレワークを始める従業員のモチベーションにも悪影響が出かねません。

どのような目標を掲げるのか、そのためにテレワークをどう活用するのか、最低でもこれらを従業員が共有できるよう働きかけたいところです。テレワークをコロナウイルスが猛威を振るっている間の一時しのぎだと捉えているのは大きな問題で、テレワークを最大限に活用するためにどうすればよいかを会社が一丸となって考えていくとよいでしょう。

社内ネットワークへのアクセス方法も重要で、会社のPCを持ち出して作業をしてもらう、リモートデスクトップ方式で会社の端末にアクセスしてもらう、クラウド上で利用できるアプリを使ってもらうなど様々なやり方がありますので、方針の選択は非常に大事です。

他にも、労働時間や自宅の水道費、光熱費を会社負担にするのかなど、事前に決めておかないといけないことがたくさんあります。経営者はしっかりと方針を決め、研修で従業員のテレワークへの意識を高めていってください。